キョロキョロコソコソ2,000万円
経営調査に行くと、経営者の性格、日頃の行動がよくわかる。
減価償却資産を調べ記入しているときなど、特によく感じる。
新品しか購入しない人、主に中古資産を購入する人、建物を新築する人、自分で建てる人などいろいろとおもしろい。
特に、中古を中心に購入している人は、その中古品を見つけるために、毎日キョロキョロしているようである。
この手のひとのほとんどは、自分自身で機械をコソコソ修理したり、建物を建てたり改造したり修繕をすることが出来る。
また、借入金も少ない等、かなりの面で酷似している。
所得も、ピンからキリまであるが、最後の最後までねばり強く経営を続ける点でも似かよっている。
ただ、中古ばかり買って修理も出来る人が必ずしも所得が特別高いわけではなく、所得の高い人は、新品と中古のバランスが実によいようである。
技術的にも経営的にも乗ってきたときには、中古の機械を漁るよりも、一気に投資をして規模拡大した方が、時流に乗る場合が多いし、その方が、所得が高くなる傾向にある。
しかしそれは一時的なことであり、永続性はない。
どんな作目でも、売上単価というものは必ず下がり、収益性は悪化する。
であるから、高所得体質になったからといって、その状態を維持していくためには、やはりもとのキョロキョロコソコソに戻るのが正しい。
経営というものは、収支−支出がプラス、つまり収支余剰がプラスなら、永遠に潰れることはない。
そこに、投資による借金返済というものが、時代の流れで過大になってきたときに、経営を停止せざるを得ない状況になるだけである。
自分で固定資産を修理し維持することが出来れば、新たな投資、借金を生じることがなく、経営は収入−直接費用支出のみで推移する。
収入−直接費用支出がマイナスになることは、よほどのことがない限りなく、ちゃんとした技術さえあれば、人生の最後までは経営を歩み続けることが出来る。
その値打ちたるや、2,000万円を下ることはないと考えている。
家族労作経営は、こういった良いところもあるのである。
そういった意味では、キョロキョロコソコソは2,000万円以上の価値があるのかもしれない。