平成15年11月10日
(改訂:平成18年2月10日)
目次
1 消費税
2 消費税の納付
3 消費税が課税される取引
課税売上げ
課税仕入れ
4 課税されない取引
不課税
非課税
5 固定資産の譲渡と減価償却費
6 免税点について
「個人事業者は、平成17年より消費税の免税点が、3,000万円から1,000万円に引き下げられました!」
7 消費税率は
8 納付税額の計算のながれ
9 納税義務者
10 免税事業者
11 確定申告・納付
12 会計処理方法
税抜き方式
税込方式
13 その他会計処理上の留意点
14 簡易課税制度
みなし仕入率
15 投資を前提として「本則課税」を選択する場合
免税業者の場合
簡易課税業者の場合
16 課税売上げ割合
このテキストは、初めて消費税の申告をしなければならない(又は、その可能性のある)個人事業主を対象に作成しています。
消費税とは、国内における物品の販売やサービスの提供について、その購入者である消費者に課せられる税金ですが、実際に消費税を納付するのはその物品サービスの販売者です。
消費者は、物品及びサービスの購入時に、代金と同時に消費税も合わせて支払います。
消費税については、消費者が税務署に直接支払う方法も考えられますが、現実的には不可能ですから、消費税を業者に納付委託する(つまり預ける)かたちで消費税を上乗せして代金を支払います。
そして、業者が消費者より預かった消費税を国に返す手続きが、消費税の申告納付です。
ですから、当然その領収書・請求書・納品書等証憑書類については、かなり正確なものが要求されます。
もちろん、業者は消費税を預かるだけでなく、物品を仕入れるときに消費税を払いますので、実際に納める消費税は、その支払った消費税を控除した残額ということになります。
そして、そのときに支払った消費税のほうが預かった消費税よりも多いときは、消費税が返ってくる(還付)場合もあります。
「事業者」が、「事業として」かつ「有償で」行われる資産の譲渡、資産の貸付及びサービスの提供などの取引をいい、「課税売上げ」と「課税仕入れ」があります。
しかし、たとえ無償でも個人事業主の自家消費取引は、課税取引にあたります。
課税売上げとは、売上げ取引だけでなく、資産の売却額も含まれます。
事例 | 注意点 |
・農産物及び加工品等の売上高 ・中古機械等固定資産売却収入額 ・家畜(子畜、育成畜、廃畜、成畜、肥育畜等)の売却収入額 ・役務収益 ・作業請負収益 ・所得税免税牛の売却収入 |
・売上高は、全て総額で計上すること(返品、値引き、及び割戻しについては控除)。手数料等を差引いた残額では計上
してはいけない。 ・中古機械の下取り価額は、その価額が課税売上げとなる。売却損益で計上しない。 ・家畜についても、同様である。 ・国または地方公共団体から受ける補助金、奨励金、助成金収入は、含まない。BSE関連補助金(公的)、転作奨励金も含まない。 (不課税) ・借地料、借家料収入は含まない。(非課税) ・土地の譲渡収入は含まない。(非課税) |
課税仕入れとは、仕入取引だけでなく、資産の購入額も含まれます。
事例 | 注意点 |
・肥料、農薬、飼料等の仕入高 ・消耗品費等の購入額 ・作業委託費用 ・税理士費用等役務の費用 ・機械、建物等の固定資産の購入額 ・家畜(子畜、育成畜、成畜等)の購入額 |
・給与、賃金(事業専従者含む)は含まない。 ・減価償却費は含まない。 ・借地料、借家料支出は含まない。(非課税) ・土地の購入支出は含まない。(非課税) |
「事業でない」か「無償」か「その他社会政策的配慮等」により課税されない取引をいいます。
この課税されない取引には、「不課税」と「非課税」がありますが、農業の場合たいへん重要な項目なので、ここに列挙します。
不課税取引は、消費税の一切の計算に関係ありません。(課税売上げ割合計算も)
・共済金収入 (消費税基通5-2-4)
・国または地方公共団体から受ける補助金、奨励金、助成金収入(消費税基通5-2-15)
BSE関連補助金、転作奨励金は不課税です。
・給与、賃金(事業専従者給与も)
・賦課金
・土地の譲渡及び貸付、住宅の貸付、郵便切手類及び印紙証紙の譲渡
固定資産の取得及び譲渡時には消費税が課税されますが、減価償却費計上時には消費税は課税されません。
「個人事業者は、平成年より消費税の免税点が、3,000万円から1,000万円に引き下げられました!」
個人事業者は、基準年(その年の2年前の年)の課税売上高が1,000万1円以上の場合は、消費税納税申告義務が生じます。
これも、説明するよりも、下記の表で理解するのが早道です。
平成16年 | 平成17年 | 平成18年 |
課税売上高 1,000万1円以上 | 納税業者になる。 | |
課税売上高 1,000万円以下 | 免税業者になる。 | |
平成16年度の免税農家は、税込金額で判断する。 | ||
平成16年度の申告農家は、税抜き金額で判断する。 |
消費税率は4%です。(国税)
それに地方消費税率1%(県税=国税×25%)が同時に申告納付されるため、合わせて5%消費税を納付しているだけです。
消費税額(国税) = ( 税込み売上高 − 税込み仕入高 ) × 100/105 × 4%
地方消費税額(県税) = 消費税額 × 25%
この計算のながれについては、実際に申告してみなければ、実感としてわかないものです。
要は、消費税は地方消費税も合わせて5%であるということを理解しておいてください。
さて、この計算の流れをさらに理解を深めるため、視覚的に憶えておきましょう。
図1で、消費税納付までの流れを税抜き処理で表していますので参照してください。
取引の流れ (業者の世界) |
消費税の流れ (国・県の世界) |
||
たまねぎ売上高200円(税抜き) |
仮受消費税10円 (200円×5%) |
||
(−) | (−) | ||
肥料等仕入高 100円(税抜き) |
仮払消費税 5円 (100円×5%) |
||
|| | || | ||
差引 100円 |
預り消費税 5円 (100円×5%) |
||
消費税申告納付は、課税期間の翌年の3月31日まで | 国への納付額(消費税) 5%の内の4% |
県への納付額(地方消費税) 5%の内の1% |
事業者は、国内取引において行った課税資産の譲渡につき、消費税を納める義務があります。
事業期間の2年前の事業期間において、課税売上高が1,000万1円以上ある事業者は、消費税納税申告義務があります。
消費税の納税義務が免除されます。
事業期間の2年前の事業期間において、課税売上高が1,000万円以下である事業者は、消費税納税義務がありません。
ただし、課税仕入に係る消費税額がいくら多額であっても、その控除ができず、還付を受けることが出来ません。
個人事業主の場合は、課税期間の翌年の3月31日までです。
税込方式と税抜方式があり、その選択は事業者の任意とされています。
免税業者は、税込方式で会計処理します。
税抜き方式については、前図1のとおりで、課税売上げに係る「仮受消費税」と課税仕入れに係る「仮払消費税」の科目を用いて、損益計算とは別に記帳する方法です。
固定資産、減価償却費計上、棚卸資産等すべて税抜取得価額で記載します。
税抜き方式で簡易課税を選択した場合において、本則課税で計算した消費税額と簡易課税方式で計算した消費税額との差額は、 事業所得計算上の雑費又は雑収入に計上します。
税込方式については、図2のとおりで、売上げ、仕入、経費などの金額をすべて消費税等込みの金額で記帳、損益計算書の作成も今までどおりに方法です。
ただ今までと違うところは、決算調整申告時において、消費税計算を行い消費税確定申告して、その額を費用として損益計算書を作成しなければならないことです。
税込方式には、下記のように2つの方式があります。
・消費税額を、課税計算年度の費用(雑費)または収益(雑収入:還付の場合)とする方式
・消費税額を、申告書提出年度の費用または収益(雑収入:還付の場合)とする方式
固定資産、減価償却費計上、棚卸資産等すべて税込取得価額で記載します。
取引のながれ(事業者の世界) |
|
たまねぎ売上高 210円(税込) |
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(−) | |
肥料等仕入高 105円(税込) |
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差引 105円(税込) |
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差引 100円 |
税込方式で計算された消費税は、所得計算上の費用になる。 消費税 5円 (100円×5%) |
いままでの説明は、すべて本則課税についてでしたが、その消費税計算方法は、実際の課税売上高と課税仕入高から消費税を導き出す方法です。
簡易課税制度は、業種ごとに、課税売上高に対して課税仕入率を想定(みなし仕入率)し、そこから課税仕入高を算出し、結果として消費税を導き出す方法です。
その条件としては、簡易課税制度の適用を受けようとする年の2年前の課税売上高が5,000万円以下で、かつ、その適用希望年の前年末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出申請することが必要です。
簡易課税制度において、業種により、課税売上高に対して課税仕入率が想定されて、その率を適用することが出来ます。
その率を、みなし仕入率といい、農業の場合70%です。
本則課税の場合 | 簡易課税の場合 |
たまねぎ売上高 200円(税抜き) |
たまねぎ売上高 200円(税抜き) |
(−) | (−) |
肥料等仕入高 100円(税抜き) |
みなし仕入高 140円(税抜き) (200円×70%) |
|| | || |
差引 100円 |
差引 60円 |
消費税額 5円 (100円×5%) (地方消費税含む) |
消費税額 3円 (60円×5%) (地方消費税含む) |
このように、実際の課税仕入高が低いときは、簡易課税制度の方が断然お得です。
みなし仕入率は、各業種によって決まっており、農業の場合は70%です。
課税仕入高は、所得計算上の費用である人件費、青色専従者給与、減価償却費等を含みません。
したがって、農家の課税仕入高は案外と低いものです。
本則課税が得か簡易課税制度が得か、その簡単な見分け方は、青色申告書に添付した決算書の費用から人件費、青色専従者給与、 減価償却費等を控除した残額と売上高との割合で判断します。
そして、もしも簡易課税制度のほうが得なら、平成16年中に税務署に出向き「消費税簡易課税制度選択届書」を提出します。
これも、なかなか行く機会がありませんから、平成15年度所得税申告の際に上記書類を提出申告しておきましょう。
これも、説明するよりも、下記の表で理解するのが早道です。
平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 | |
課税売上高 5,000万1円以上 |
簡易課税制度を選択していても、本則課税になる。 | 納税業者になる。 | |
化成売上高 1,000万1円以上 5,000万円以下 |
簡易課税制度を選択している場合、簡易課税制度適用義務がある。 | ||
課税売上高 1,000万円以下 |
簡易課税制度を選択していても、免税業者になる。 | ||
平成16年度の免税農家は、税込金額で判断する。 |
|||
平成16年度の申告農家は、税抜き金額で判断する。 |
ただし、簡易課税制度を適用すると、2年間はその制度を継続しなければなりません。
しかし、本則課税は、1年で変更することができます。
その選択しようとする課税期間に、「消費税課税事業者選択届出書」を提出申請します。
ただし、2年間は納税業者として、消費税申告の義務が生じます。
免税業者に戻りたいときは、止めようとする課税期間の前年末までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」提出します。
その前年末までに、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出申請します。
しかし、本則課税は、1年で変更することができます。
再度簡易課税業者に戻りたいときは、適用を受けようとする課税期間の前年末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」提出します。
農業の場合、課税されない取引の大部分が、不課税である補助金関係収入や共済金収入であるため、課税売上げ割合についてはそんなに関係ないと判断して、ここでは説明しません。